「プロンプトの時代は終わる」 AIエージェント時代の業務改革とは|Lightblue Boot Camp in 鎌倉 開催レポート

生成AIを「導入して終わり」にしないための、実践型イベント

Lightblue Boot Camp in 鎌倉

企業で生成AIの導入が進む一方、多くの現場では「使われない」「業務に組み込まれない」「個人利用にとどまる」という課題に向き合う場として2026年3月6日〜7日に神奈川県鎌倉市・鎌倉プリンスホテルで開催されたLightblue主催のイベントです。参加企業は16社24名。製造業を中心に多様な業種のAI推進担当者が集まり、それぞれの課題と向き合いました。本記事では、一般社団法人生成AI普及協会 協議員 小澤健祐氏(おざけん氏)によるセッション内容をお届けいたします。

生成AIの企業活用は、いま大きな転換点を迎えています。これまでのAI活用は、ChatGPTなどを用いたプロンプト入力による単発の業務支援が中心でした。しかし現在、その活用は次のフェーズへと移行しつつあります。それがAIエージェントによる業務改革です。本記事では、Lightblue Boot Camp in 鎌倉で行われたトレンドセッションをもとに、企業におけるAI活用の変化と今後の方向性を整理します。

登壇者:小澤健祐氏(おざけん氏) 一般社団法人生成AI普及協会 協議員

AIはすでに社会を変え始めている

AIの進化は、単なる効率化の枠を超え、社会構造そのものに影響を与え始めています。セッションでは、象徴的な変化として次のような事例が紹介されました。

・大学入学共通テストでChatGPTが9科目満点を取り、東大合格レベルに到達
・ハーバード大学MBA卒業者の4人に1人が無職というアメリカの状況
・日本でも求人が前年比で21%減少し、事務職は-50.7%と大幅に減少

「電卓がある時代に、そろばんの達人を目指すようなことが起きている」という比喩で、従来の「当たり前」を疑い、AIエージェントの実装を進めていく必要性が訴えられました。この比喩が示すように、AIは単なる補助ツールではなく、仕事の前提そのものを変える技術へと進化しています。

プロンプトエンジニアリングの限界

現在多くの企業が取り組んでいるのが、いわゆるプロンプトエンジニアリングです。AIに対して指示文を書き、回答を得るという使い方です。しかしこの方法には大きな課題があります。それは再現性が低いことです。

・同じプロンプトでも結果が変わる
・個人のスキルに依存する

こうした問題から、企業の業務に組み込むには限界があると言われています。おざけん氏は「全員がプロンプトを書く時代は終わる」と強調しました。また、「生成AI活用が失敗する主因は、文脈(コンテキスト)の欠損にある」という認識が共有されました。

AIエージェントとは何か

そこで注目されているのがAIエージェントです。Boot Campでは、これを「車」と「電車」という例で説明しました。

・車(指示型エージェント):目的地だけを伝えてナビに任せる方式。柔軟だが再現性が弱い
・電車(ワークフロー型エージェント):事前に経路(線路)を定義し、同じ運用を繰り返せる方式。再現性が高い

企業の業務では、後者のようにワークフローを定義したAIが重要になります。「業務で必要なのは、車と電車を使い分けること。あらかじめ“どこを経由して、どの順番で処理するか”を定義して、再現性のあるエージェントを作ることが重要だ」と述べられました。

AI活用の鍵はコンテキストにある

AIエージェントを設計する上で重要なのがコンテキストエンジニアリングです。AIに与えるべき情報は次の4つです。

  1. 前提情報:経営戦略、MVV、製品の強み、会社のルールなど、比較的変化しにくい判断の軸となる情報
  2. システムプロンプト:出力の再現性を高めるために、役割・目的・判断基準などを明確にした設計
  3. 長期記憶(対話履歴):過去の会話履歴や思考の傾向を踏まえた一貫性のある対応
  4. 検索・外部情報:社内外の情報を参照し、より広い視点での回答や分析を可能にする

これらの文脈をAIに与えることで、AIは単なるチャットツールから業務アシスタントへと進化します。

日本企業のAI活用はむしろ強い

興味深いのは、日本企業にはAI活用の強みがあるという点です。それは現場の業務ノウハウです。多くの企業には暗黙知、現場知識、業務フローが蓄積されています。

「プロンプト技法よりも、業務知識をきちんと落とし込み、社内の暗黙知を形式知化できるかが重要。日本の会社には現場に良いノウハウが多く、ラストワンマイルのすり合わせや実装力は日本の強みになり得る」

日本企業の現場知識をAIに組み込むことができれば、AIは企業の競争力を大きく高める可能性があります。

AI導入の次は業務改革

AIの導入はすでに多くの企業で進んでいます。しかし今後重要になるのは、AIを業務にどう組み込むかです。AIエージェントは業務フロー、ナレッジ、社内ルールを統合することで、企業の働き方そのものを変える可能性があります。生成AI活用は、いま「導入」から「業務改革」へと進んでいます。


【レポート】Lightblue Boot Camp in 鎌倉

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