生成AIアシスタント「Lightblue」が「HENNGE One」と連携開始。SSO対応で利便性とセキュリティを両立。
アカウント管理の負担を最小化し、高度なセキュリティ環境下での生成AI活用を可能に 株式会社Lightblue(本社:東京都千代田区...

2024年以降、生成AIの導入は「試行」から「全社浸透」のフェーズへと移りました。しかし、期待以上の成果を上げている日本企業はわずか13%にすぎず、多くの企業が「導入したものの、一部の個人の効率化で止まっている」という現実に直面しています。
そんな中、従業員の9割以上が登録し、MAU(月間アクティブユーザー)7割超、現場主導で1,300以上のアシスタントが誕生しているのが、オムロン ヘルスケア株式会社です。同社はいかにしてAIを「特別なツール」から「当たり前の社内用語」へと変貌させたのか。推進の立役者である山谷氏、竹内氏へのインタビューから、その極意を探りました。
山谷 孝史氏(オムロンヘルスケア株式会社|コーポレート経営変革本部 グローバルIT革新部マネージャー)
2006年より、オムロン株式会社にて主に生産・SCM関連のシステム構築やデータ分析、電子部品事業のSCMビジネスプロセス改善を担当。2021年よりオムロン ヘルスケア株式会社の現組織にて、データアナリティクスやAIの事業活用を推進している。
竹内 智士氏(オムロンヘルスケア株式会社|コーポレート経営変革本部 グローバルIT革新部リーダー)
2008年より大手システム会社でデータベースを中心とした各種プロジェクトを担当。2020年にオムロン ヘルスケア株式会社に参画し、遠隔医療サービスをはじめとしたBtoB/BtoC サービスシステムの開発リードを経て、現在は DX 推進を担当している。
川俣 彰広(株式会社Lightblue/営業部長)
新卒で株式会社ワークスアプリケーションに入社しエンタープライズ向け営業及びマネージャーとして個人年間売上No.1、年間目標3年連続達成。 2019年からWovn Technologies株式会社にてエンタープライズ向け営業及びマネージャーとして従事し、初年度から個人営業売上No.1を達成。 営業支援のフリーランスを経て、2023年にLightblueの営業部長としてジョイン。
山谷氏:
「弊社が生成AI活用の取り組みを始めたのは2023年頃、ChatGPTが登場した直後からです。当時はちょうど、DXをどのように社内に推進していくかという戦略策定や、具体的な取り組みをスタートした時期でした。
ただ、データやAIの活用という軸で見たとき、社内ではそれをどう使うかというところに、ピンときている人は少なかったと思います。データを使うのも一部のエキスパートで、AIはさらに難しいもの、という捉え方をされていて。いかにその敷居を下げながら、自分たちの業務に組み込んでいくかが、大きな課題でした。」
川俣:
「山谷さん自身は価値を感じていたけれど、まだ全社的には『何に使えるんだろう?』という状態だったと。」
山谷氏:
「そうですね。当時、オムロングループ共通のChatGPTライクなツールは展開されていたんですが、自分として強く感じたのが、すごく可能性がある仕組みにもかかわらず、個人作業の効率化にとどまっている、ということでした。
これから社内に全展開していく仕組みは、それだけにとどまるものではなくて、自分たちの仕事のあり方や業務プロセスに組み込んでいける仕組みでなければならない。そのためには、業務をラッピングするアシスタント機能や、それを組織内で共有できる仕掛けが必要だと考えていました。」
山谷氏:
「最初は、我々の部門10名と、ビジネス部門の方数名に協力いただいて、どんなふうに使えるかを評価しながら進めました。どのように使うと業務の中で効果が出るのか、誰も正解がわからないところからスタートして、試行錯誤しながら見出していったのが最初の動きです。
その評価を進めながら、『この使い方ならいける』という知見を持って、2025年の4〜5月頃に経営層へ生成AIでの活用について、教育も含めて提案を行いました。」
川俣:
「あの経営層へのデモ会は、本当に転換点でしたよね。私たちも同席しましたが、ボードメンバー全員に対して具体的な事例とデモをお見せして、実際に触ってもらう会でした。あの事例について、詳しくお聞かせいただけますか?」
山谷氏:
「正直、事例はすぐに出たわけではなく、1年ぐらいかけてどこに活用できるかを模索していました。試行錯誤は一本や二本ではなく、かなり多くやっていた中で、『これは業務にインパクトがある』というものをようやく見出せた形です。
具体的には、弊社の商品に対して、お客様から様々なご意見をいただくのですが、その情報をもとに『商品としてこういう改善点があるんじゃないか』という仮説の壁打ちをできるアシスタントを作りました。
更に壁打ちだけにとどまらず、商品マニュアルの情報とレビューをかけあわせて『マニュアルの改善点を見つけブラッシュアップする』というようなアシスタントも作りあげました。
川俣:
「すごいですよね。マニュアル作成業務において、ユーザーからのフィードバックやクレームの情報を活かして品質向上につなげる。これって業務の方じゃないとアイデアが浮かばないし、技術的な思考もないと進まない。現場部門との連携があったからこそ生まれた事例ですよね。」
山谷氏:
「社内でそういう業務をされている方と普段からコミュニケーションを取っていましたし、一緒に組み上げてきたという形で生まれた事例です。一緒にやるというのは、本当に大事なことだったと今でも思います。」
山谷氏:
「まずは、部門ごとに推進リーダーを立てる体制を作りました。その推進者の方々が動きやすいように、弊社の中でLightblueの活用度がどれぐらいあるのかを、データをもとに可視化するということは徹底的に行いました。これにより、『誰にどうアプローチしたらいいか』を推進者自身が把握でき、活動計画を組み立てられるようになりました。」
川俣 :
「社員への教育では、どのような取り組みをされていますか?」
山谷氏:
「社内では利用を促進するためのウェビナーを定期的に実施しています。最近はアシスタントの作成の仕方を紹介しましたね。あとは教育だけじゃなく、アシスタントコンテストも開催していて、事例を作った方自身に説明してもらうことで、社内に多様な事例を浸透させる仕掛けも取り入れています。」
川俣:
「アシスタントコンテスト、素晴らしいですね!竹内さん、文化を根付かせるために特に効果的だった取り組みは何でしたか?」
竹内氏:
「大きく三つあります。
1つ目は、今お話があった社内コミュニティやイベントを定期的に実施すること。初心者向けの勉強会やアシスタントコンテストで社内を盛り上げて、Lightblueの知名度を上げていく。コミュニティでも新機能のリリース情報やTipsを定期的に発信しています。
2つ目が、WindowsでLightblueをアプリ化させることです。これは社内の方からの共有で教えていただいたんですが、Windowsの標準機能でウェブブラウザをアプリ化することで、ブラウザで使うよりも敷居がぐっと下がって、使用する方が大幅に増えました。
3つ目は、実は私も意外だったんですが、システム的な準備を整えてあげることです。具体的にはシングルサインオンですね。」
川俣:
「SSOですか。」
竹内氏:
「はい。シングルサインオンがない時代はワンタイムパスワードでやっていたんですが、あれが結構面倒で、使う障壁になっていたんです。SSOが搭載されたことで、『これだったら使いたい』という方が一定数いらっしゃって。そこから使い始めて定着していった印象です。」
川俣:
「わかります。パスワードを入れて3ステップするだけなのに、大きな障壁になりますよね。小さなことだと思いがちですけど、本当に使わせようと考えると、そこまで設計してあげないとダメなんですよね。」
竹内氏:
「そうなんです。実際に活用していくと、使う側が詰まるポイントがどんどんわかってきて。やってる側は『これぐらい』と思いますけど、使う側としては重要な要素だったんですよね。」
竹内氏:
「全体に公開する、社内全員が見られる環境を作ることで、敷居を下げることを大切にしています。本当にプロトタイプでも、クオリティ的にはどうかなというものでも、社内全員が使えるように発信したりしているんです。
そうすると、それに呼応して「自分もやってみようかな」という輪が広がり、「あのアシスタントいいよね」「あれ使ってるよ」という声がどんどん生まれてきます。
川俣:
「カジュアルに便利なツールをみんなで作って、簡単に共有する。そういう文化を作ることが大事なんですね。活用が進む中で、社内にどんな変化がありましたか?」
竹内氏:
「『Lightblue』という単語が、共通の社内用語として通じるようになったのが、一番大きな変化だと思います。弊社では登録率が9割以上なので、ほぼ全員がアカウントを持っている状態なんですが、全然関係のない打ち合わせで話しているときに、『これLightblueで聞けばいいんじゃないの?』『これアシスタントにすればいいんじゃないの?』と、私が何も言わなくても、実際に使っている部門の方たちから発信していただけるようになりました。
川俣:
「素晴らしいですね。これはどのレイヤーの方までそうなっていますか?部長クラスでも同じような発言が出てきますか?」
竹内氏:
「はい、マネジメント層の方からもそういう話が出ています。現場だけではなく、上の方たちの理解も進んでいると感じます。特に上の方がバリバリ使っていると、自動的に部下の方たちに『これでやればいいじゃん』となるので、『知らない』ことが許されないプレッシャーになってくる。上の方たちがどれくらい使っているかは重要なポイントですね。」
川俣:
「上層部が理解していないと、『本当に大丈夫なのか』『検証したのか』でプロジェクトが止まりがちですけど、『まず試してみればいいじゃん』という空気感が出てくると、改善が進みやすくなりますよね。」
山谷氏:
「今、日本の従業員の9割以上がLightblueのユーザーとして登録していて、そのうちの7割ぐらいがマンスリーアクティブユーザーという状態です。弊社ではLightblueの活用度を可視化するダッシュボードを作っていて、部門ごとにどれくらい活用されているか、経営に関わる人が使っているのか、一般社員が使っているのかといった職務資格別の利用状況も測っています。」
川俣:
「このレポートは経営会議でも出されるんですか?」
山谷氏:
「はい、毎月経営層に向けて送っていて、そこからフィードバックをもらっています。全体としてどれくらい使われているかに関心を持って話してくださる方もいらっしゃいますね。」
山谷氏:
「従業員の7割がアクティブユーザーというのは、生成AIを本格的に業務の中に組み込んでいく『下地が整った状態』だと捉えています。
最初から業務にがっつり組み込もうとすると、どうしても一部の人しかできない。だからまず、みんなが『生成AIってどんな使い方ができるんだろう』と考えられる状態を整えたんです。Lightblueを使うことで、本当に迅速にこの状態まで持っていけました。
川俣氏:
「AIに触ってみないと、本当にどうやって使えるかわからない。それが本当の『下地』なんですよね。ここからは本当に働き方が変わったと実感できるステップに移っていくんだろうなと感じます。」
山谷氏:
「そうです。今後はこの7割のアクティブユーザーの皆さんの知見をいただきながら、どこでAIを活用すると業務がもっと良くなるか、効率化やバリューアップにつながるかを探索して、リストアップしていきます。そのユースケースによっては、Lightblueのアシスタントで十分なものもあれば、向かない部分も出てくる。そういうところではAIエージェントなど、次の技術を組み込んでいくことも考えています。ライトブルーだけにとどまらず、適材適所でツールを導入しながら、より業務へ組み込んでいきたいですね。」
竹内氏:
「まずは、リテラシーの格差が広がっていることです。使える方はどんどん使っていって、自分の業務に組み込んだり、他の人に使い方を説明する『ファン』として動いてくださる方もいる。一方で、使いたいけど使い方がわからないという方も一定数いらっしゃいます。そういう方には、他の部門での使い方を紹介したり、議事録をまとめるといった部門共通の作業から入ってもらったりしています。
川俣:
「まずは、活用に向けて一歩を踏み出してもらうことが大事ですよね。」
竹内氏:
「はい。もう1つは、アシスタントがまだ個人利用にとどまっていることです。私たちとしては組織として使ってほしいので、いかに個人ユースから組織ユースへ進化させていくかが来年の命題になっています。組織ユースにすることで、組織全体の効率化や新しいバリュー創出につなげていきたいと考えています。」
山谷氏:
「リテラシーを上げていくことは引き続き大きな課題です。下地が整ったとはいえ、活用の習熟度はこれからもずっと上げていかないといけない。それによって『業務の中でこれを使おう』という意識もブラッシュアップされていくと思っています。」
オムロンヘルスケア様の事例で最も注目すべきは、『MAU7割』という数字を単なる『目的』ではなく、次なるAIエージェント活用のための『土壌作り』と捉えている点です。
『AIに触ってみないと、どう使えるかわからない』—この言葉が象徴するように、同社は全員が生成AIを”考えられる状態”を作ることに注力しました。1,300を超えるアシスタントは、その土壌から自然と芽吹いた成果です。多くの日本企業にとっての参考事例となるのではなないでしょうか。